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墨出しはどんな作業?目的や種類、逃げ墨の意味についてわかりやすく解説します!

2023/10/31

建築の世界には独特の専門用語が多数あります。

今回紹介する「逃げ墨」も建築の専門用語の一つですが、普通に生活しているとあまり耳にしない単語ではないでしょうか。

逃げ墨を理解するには、墨出しのことをわかっておかなければなりません。

今回は墨出しとは何か、墨出しの目的や種類、逃げ墨の意味などについて解説します。

墨出しはどんな作業?目的や種類、逃げ墨の意味についてわかりやすく解説します!

墨出しとは?

墨出しとは、作業する現場の地面や壁、床、使用する木材などに図面で指示された寸法や基準となる線を描写する作業のことです。

現場作業の下書きといってもよいでしょう。

墨出しで書かれた内容に基づいて床の高さや台所、照明、エアコンなどの空調、部屋の扉などの位置を調整します。

墨壺という道具を使って直線を描きますが、最近はレーザーを使った墨出しも盛んにおこなわれています。

墨出し作業は基本的に2人一組で行いますが、現在はレーザー墨出し器をつかって一人でやるケースが増えています。

一度、墨出しで墨を打ってしまうと後から消すのは困難ですので、2人一組のときは慣れている人(経験者)が先端を持ちます。

墨出しの目的

墨出しの目的は設計図に書いてある情報を、実際の現場に書き込み原寸大の設計図を書き表すことです。

図面を見るだけではわかりにくい位置関係や寸法などの建物に関する情報を、現場にいる作業員全員で共有するために有効な手段です。

より具体的に目的を見てみましょう。

建物の位置の基準をあらわすため

一番の目的は建物の位置の基準をあらわすことです。

柱の位置がズレてしまうと施工全体をやり直すことになりかねません。

建物全体の基準をあらわす作業であり、建築上とても重要な作業なのです。

建物のおおよその形(アウトライン)をあらわすため

もう一つの目的は建物のアウトラインを表し、イメージしやすくすることです。

建築中の建物で、何がどこに配置されるかといった位置情報は極めて重要です。

水道管やガス管などの配管類や電気の配管の位置がずれてしまうと、施工に大きな影響が出てしまいます。

多くの人が働く建築現場で、誰が見ても設備の配置がすぐわかるようにしておくことで配置ミスを避けることができます。

墨出しをするときの大事なポイント

ここまで、墨出しの重要性について解説してきました。

これだけ重要な墨出しですので、極めて慎重に行う必要があります。

注意すべき2つのポイントを解説します。

正確に行うことが大事

1つ目のポイントは正確に行うことです。

建物の基準や設備の配置などをあらわす墨が少しずつズレていけば、そのズレが蓄積してしまいます。

最悪の場合、出来上がった建物が基準を満たせず欠陥品になってしまいます。

どれだけ急いで施工しなければならない状況であっても、墨出しは正確に行わなければなりません。

わかりやすく書くことが大事

2つ目のポイントはわかりやすさです。

墨出しの目的の一つは現場で働く人たちによる情報共有です。

墨を見て「これはどういう意味だろう?」と考えてしまうような状況であれば、それぞれが微妙に違う解釈をしてしまい、意図していないずれが発生するかもしれません。

誰が見てもわかるように、墨出しすることは必須の条件です。

墨出しの種類

設計図面にあわせて現場に印をつける墨出しは大きく分けて陸墨・芯墨・逃げ墨の3種類です。

それぞれの内容についてみてみましょう。

陸墨(ろくずみ)

床の高さを示すときに行われる墨出しで、水墨(みずすみ)と呼ばれることもあります。

陸墨は各階の水平を示す重要な印であり、床の基準として機能します。

作業現場で高さを示す基準の線と考えてよいでしょう。

陸墨から上に打つものを「上がり墨」、下に打つものを「下がり墨」といいます。

芯墨(しんずみ)

建物に設置する柱や梁、壁の中心を示す印です。

建物の骨格部分となる構造材の中心部分を示すもので、品質を高めるために極めて重要です。

心墨や真墨などと表記されることもありますが、意味は同じです。

逃げ墨(にげずみ)

本来であれば墨を打ちたい(書きたい)場所に障害となるものがあったり、奥なった場所にあって手が届かない場所であるときなどに打ちます。

作業の進捗により、一度打った墨が隠れてしまうような場合にも逃げ墨が打たれます。

逃げ墨は返り墨、寄り墨ともいいますが、いずれも同じ意味の言葉です。

逃げ墨は本来打つべき場所から50〜100cm離れた場所に打ちます。

本来打つべき場所(芯)からの距離を1000、2000などと書いてわかりやすくします。

まとめ

今回は建築現場の作業の中でも非常に重要な墨出し作業と作業の目的、陸墨・芯墨・逃げ墨などの墨出しの種類についてまとめました。

墨出しの種類の一つである逃げ墨は、墨を打てない場所や作業の進捗によって墨が隠れてしまう場所で使用されます。

墨出し作業は建物の品質を左右する重要な作業ですので、正確さだけではなく、わかりやすさも大事です。